新しい年を迎えて、一緒に考えましょう。

2012年を、お元気でお迎えになったでしょうか。

関東地方は穏やかな晴天に恵まれたお正月でしたが、ところによっては、大変な積雪になったようです。石巻からも雪のニュースが来て、被災地の仮設住宅で過ごす方には厳しい寒さの日々になっていることを思い、胸が傷みました。


昨年は、北九州、福岡の数ヶ所での巡回のほかに、茨城県つくば市、滋賀県大津市、兵庫県芦屋市、奈良市、沖縄那覇市などで展覧会が開かれ、数ヶ所で、講演会、ギャラリートークなどをやらせていただきました。

イスラエル親善協会でのミニ・コンサートは、はじめてのピアノ伴奏での試みでしたが、幸い、大使はじめ多くの方からお褒めの言葉をいただきました。

また、東日本大震災の後、イスラエルに住むテレジンからの生還者ディタ・クラウスとプラハで会い、あらためて当時のテレジンでの生活のことなどを聞き、新しい本の執筆に大きな力をいただきました、

その後、被災地石巻への支援金を集めるためのコンサートをひらき、たくさんの方からのご協力で、画用紙やクレヨン、色鉛筆などを持って、石巻市立荻浜小学校を訪問、宇宙フォーラムのご協力もあって、子どもたちの描いた絵を宇宙ステーションへ飛ばすという大きな夢を一緒に見ることができました。北九州、福岡の小学校の子どもたちから、荻浜小へのたくさんの応援メッセージやプレゼントもとどきました。また、出版社からの寄付をふくめ、荻浜小へ一緒に行った画家、前田優光さんや、九州の鍬塚聡子さん、水口和子さんが集めてくださった本を贈ることもでき、図書室の本が流されてしまった荻浜小にも新しい図書室が出来ました。

……こう書いてくると、ああ、去年もいろいろと活動できたのだ!と、あらためて思います。「集まりましょう」と何度も言いながら、なかなか皆さんに集まっていただく機会をつくれず、ご協力くださっている方には申し訳なく、本を書くことで疲れきってしまった自分の力の足りなさを悲しく思っていたのですが、私が動けなくても、テレジンの子どもたちは元気に飛び歩いてくれているのですね。

12月に、第三文明社から『フリードル先生とテレジンの子どもたち』が出版されました。

もう一つ、別の出版社からの本が出るはずで、数ヶ月早く仕事は進んでいたのですが、問題が生じて躓いています。

私としては、日本ではまったく知名度のなかったフリードル・ディッカーという女性の、画家としての実績よりも、教育者として、子どものために生きた女性としての素晴らしさ――それは、あのヤヌシュ・コルチャックと重なる存在です――を、書いておかなければならないという意図と、もう一つ、これまでに会ってきたテレジンの“子どもたち”から聞いた、そして、これまでほとんど書かれていない、戦争が始まったとき、突然生活が一変してしまったとき、理由も分からず収容所へ送られたとき、そして、そこでの子どもも単に労働力としか見てくれないシステム、次々と失われていく命を見たときなどの、子どもたちの思いを書き留めておかなければという意図がありました。

それは、一冊の本では無理、もしかすると、二冊、三冊書くべきなのです。しかも、あの“子どもたち”がいなくなったら消えてしまう歴史、長い間、彼らの胸の奥底にしまわれ、封印されていた記憶を、たまたま私は聞かせていただけた、だから、伝えなければ、という義務のような思いもありました。

それが、躓いてしまったのは、私としては納得できないことです。何があっても、もう一冊の本も日の目を見せてあげなければならないと考えています。

今年の最初の仕事は、もう完全に出来上がっている作品を本にすることです。

 

『フリードル先生とテレジンの子どもたち』の朗読会も開きたいと思います。これは、朗読に向いた本ではないでしょうか。

昨年新しく作った20枚セットのパネルは、とても分かりやすいと好評です。学校教材用の12枚セットのものとともに、都内で展覧会を開きたいと思います。

朗読会、展覧会 開催したいと思ったらぜひご連絡ください。

学校図書株式会社発行の教科書「みんなと学ぶ 国語 小学校6年(下)」に掲載された『フリードルとテレジンの小さな画家たち』も、間もなく、教室で学ばれる時期になります。たくさんの子どもたちが、テレジンを知り、あの子どもたちのこと、フリードル先生のことをもっと知りたいと思ってくれることを心から願っています。

もっと知りたいという学校へは、全国どこでも出かけます。ぜひ声をかけてください。

昨年(2011年)が、日本で『テレジン収容所の幼い画家たち展』を開催してからちょうど20年目でした。2012年は、また新しい時代へのスタートだと思っています。

テレジンの子どもたちを通して、命の大切さを考えましょう。

フリードル・ディッカーを通して、どんなときでも、子どもたちが明日への希望をもって生きられるよう、そのために、おとなは何をすべきか、一緒に考えましょう。        

 

<テレジンを語りつぐ会>  野村 路子

 

2012年 年頭のご挨拶 ~テレジンを語りつぐ会代表・野村路子~

画像をクリックすると拡大でご覧いただけます
画像をクリックすると拡大でご覧いただけます

 新しい年を、お元気でお迎えでしょうか。いろりろなことがあった2011年でした。

 思いがけない災害で、多くの尊い命が失われました。悲しみの中で新年ンを迎えられた方たちに、なんと挨拶したらいいか…。1978年に、私は、当時発行していた雑誌『グラフふるさと』の特集号を石巻市で作りました。北上川のほとりを、商店街を、日和山を何度歩いたことか、私にとっては、第二、第三のふるさとともいえる懐かしい街が、灰色の瓦礫に変わってしまうなんて…悲しみに胸ふさがれながら、それでも、数ケ月の間、私に何ができるだろうか、を繰り返し考えました。
 テレジンの子どもたちに生きる力を与えた大人たちのことを考え、たくさんの方(子どもたちもいました!)のご協力を得て、7月には、画用紙やクレヨンを持って、石巻市立荻浜小学校を訪れました。
 そこには、健気に前を向いて歩き始めている子どもたち、彼らを支え、励ましている先生や親や地域の方たちがいました。そんな出会いの中で、テレジンを語ることの大切さを再確認し、もう少し頑張らなければ…という気持ちになりました。
 そんな思いから、12月に『フリードル先生とテレジンの子どもたち』を出版しました。 ぜひ呼んでください。子どもたちに呼んで欲しい本です。
 個人的にも失うものが多かった昨年でしたが、テレジン、そして、この本のおかげで、新しい出会いにも恵まれ、喪失感から少し立ち直ることが出来そうです。
 皆さまにとって、今年はいい年になりますよう心から願っています。

2012年 正月 

野村路子