2014年 新しい年のご挨拶

遅ればせながら、今年の年賀状をここにも出しておきたいと思います。

もう30数年も前―タウン誌からはじまって、雑誌や新聞でエッセイやルポルタージュを書くようになり、それまでの友人・知人だけでなく、取材させていただいた相手や、感想を寄せてくださる読者の方へも年賀状をお送りするようになり、長々と近況報告や抱負を書き、印刷したものを出すようになりました。

まだまだ皆さんがパソコンで年賀状を作るなど考えられない時代でした。印刷の文面では失礼だから、元旦から、一枚いちまい宛先を自筆で書き、一言書き添えることにしたものの、500枚出していた年もあり、お正月の大きな仕事になっていました。そのころは、会社の賀状以外はほとんどが手書き、毎年のように、2・3枚は、ご自分の名前を書き忘れているのがあり、筆跡で相手を考え、電話をして「当たった!」なんて喜んだ思い出もありました。それぞれに趣向を凝らして、版画やイラストなど楽しいものも多くありました。

……時代が変わりました。いつの間にか、いただく賀状の半分以上が、本文も差出人の名前も、そして宛名も印刷になり、相手の顔が見えなくなりました。12月の大掃除の合間に、プリンターがかたかたと産み出した何十枚かの賀状の一枚が送られてくるのだなと、版画の上手だったAさん、流れるような美しい文字の上に、小さく切った千代紙を散らしていたBさん、あまり上手とは言えないけれど干支の絵を墨で描いていたCさんを懐かしく思い出すようになりました……そんな思いもあって、頑なに宛名の印刷をやめています。

いつまで続けられるか分かりませんが、元旦に一枚ずつ宛名を書く、ちょっと大変な仕事を大事に守って行こうと思っています。 

12月の秘密保護法の強行採決、東京都知事の辞任、今年は消費税増税、個人的にいえば、特定疾患医療費の削減……あまりいいことが考えられない新年ですが、いい仕事を残せる年にしたいと心から願っています。

あけましておめでとうございます。

 

「日本はどこへ行こうとしているのかしら?」昨年は、何度もそんな会話をしました。

TPPにはじまり、特定秘密保護法、高齢者や低所得者の生活を脅かす税制、東日本被災地を置き去りにして大騒ぎの東京オリンピック招致……まさに「じぇじぇじぇ」です。

平和はいいけれど、平和ボケになって、戦争の足音を聞き取れずにいたら、きっと「倍返し」の目にあいます。領土、領空、核、各地でつづく政策への不安・反発、そして正体の見えない恐怖政治……

どれも「おもてなし」なんかできないことばかりです。

行動するなら「今でしょ」とは思いつつ、若かった時のようには体が動いてくれないのが悲しいです。

 

それでも、頑張ったのですよ。平和の素晴らしさ、命の大切さ、今、生きていることに感謝し、常に自分には何ができるかを考えましょうと伝えるために……

テレジンの展示・コンサート、コシチェルニャック展、執筆、講演会、被災地訪問、どれも、今年も続けなければならないことばかりです。

以前、難病指定の病気を発症した時、友人が「大丈夫、あなたには、テレジンの1万5000人の子どもたちがついているのだから」と言ってくれました。今、それを信じたいと思います。

 

今年は、どなたにとっても、生きていてよかったと思えるようないい年になりますよう、そして、あなたのご健康と、変わらないご厚誼を心から願っています。

 

2014年 元旦

テレジンを語るつぐ会 代表 野村 路子