テレジン通信:2023年11月

府中での展覧会が無事に終わりました。

イスラエルのガザへの攻撃が大きくなりつつあったときで、主催する関口さんからは「こんな時に、テレジンの展覧会をやっていいのかしら?」という不安を聞きました。「当然よ、今、こんな時だからこそ、やるべきだと思う。今こそ、命の大切さを、平和の大事さを伝える時だから」と私は答えました。

今、そう答えた時よりもさらに状況は悪くなっています。

「戦争は、なぜ戦争が起こったかの理由すら知らない子どもたちを犠牲にします。これらの絵は、戦争の時代にも、明日への夢や希望を持って生きていた子どもたち、理不尽にも命を奪われた子どもたちの《もっと生きていたかった》という願いを伝えるものです。戦争は、こんな素晴らしい才能や可能性を持っていた子どもたちの明日を断ち切ってしまったのです。もう二度と同じような悲劇を起こさないでください。そんなメッセージを伝える展覧会です」

私は32年前に『テレジン収容所の幼い画家たち展』を始める時に、そう語りました。

今もその思いは変わっていません。どこの国の子どもも、どの民族の子どもも、泣かせないでください、命を奪わないでください・・・何度そう願ったか・・・。

私は無力です、しかも高齢になりました。大声で何か叫ぶ力はありません。

ただ、この絵を描いた子どもたちの涙を知って欲しいから、「戦争はやめて」「命を大事にして」という、あの子たちの願いを聴いて欲しいから、今、もう一度、展覧会を開きます。

 

イスラエルに住む友人からメールが来ました。30年も前からエルサレムに住み結婚し、幸せな生活をしていた人です。

今、兵役についていた次女(国民皆兵制のイスラエルでは、18歳から、男性は3年、女性は2年の兵役があります)は、ハイファで、シェルターにいる子どもたちの教育に当たっているとのこと。そして、すでに兵役を終え大学在学中だった長男と長女は、予備役として招集され、今、どこかで銃を持って戦っている(?)ようです。ハイファの子どもたちが描いた絵を送ってきました。

悲しい絵です。何を描いたのか、・・・何もかも消えてしまうのか、消してしまいたいのか・・・それとも心の中の怒りが黒や茶のクレヨンに現れてしまったのか・・・。

こんな絵を子どもに描かせてはいけないと強く思います。

悲しいけれど、イスラエルの子どもだから絵を描く機会があった、ガザの子どもはクレヨンを握ることすらできないのだ・・・と思ってしまいます。

イスラエルの子どもにも、ガザの子どもにも、赤や黄のクレヨンで、白い画用紙に美しい花を描かせてあげたい。そう強く願います!!

 

テレジンを語りつぐ会   野村 路子